札幌学院大学 2005年前期
近代政治思想
シラバス
授業のねらい:
この授業では、近代の法・政治制度を支える最も基本的な原理について、近代西洋の歴史的な経緯を踏まえながら、体系的に学習することを目指す。具体的には、「民主主義」「自由主義」「社会主義」という三つの代表的な思想潮流の形成・確立・変容の過程を概説する。
その上で、現在それぞれの思想が直面している問題点を、グローバル化と国民主権の乖離、現代自由主義に内在するパラドクス、という二点を軸に整理する。
政治学によれば、世界は一つの完結した体系ではない。それは、複数の力や思想が互いに対立し拮抗しあう中で成り立っている。この授業の目的も、近代政治思想を体系的に理解するだけでなく、それらが現在直面している「問題」を正しく把握し、その対応をともに考えることにある。
到達目標:
1 公務員試験の政治思想部門に対応する知識の習得
2 教科書の理解(福田歓一『政治学史』の理解は学部生の最高到達点)
3 現代世界の抱える政治問題を、「思想的」に表現できるようになること
授業方法:
講義形式で行う。授業の中での質問・討議を歓迎する。毎回質問票を配布し、次の授業でフィードバックする。
授業内容:
近代政治思想の流れを三つの柱によって概説し、その延長に、現代世界の抱える諸問題を位置づける。
※(補)は時間があれば触れる内容
第1部 民主主義の系譜
(1)中世的世界の解体(ルネサンスと宗教改革)
(2)主権論の登場(マキアヴェリ、ボダン)
(3)社会契約論1(ホッブズ、ロック)
(4)社会契約論2(ルソーとフランス革命)
(5)19世紀の民主主義(トクヴィル、ミルと大衆民主主義)
(補)現代の民主主義(全体主義、グローバル化と帝国論)
第2部 自由主義の系譜
(6)近代立憲主義と思想の自由
(7)ロックと所有的個人主義
(8)中間試験
(9)アダム・スミスと市場主義
(10)19世紀における自由主義の変容(ヘーゲル、マルクス、新自由主義)
(11)現代の自由主義(バーリン、福祉国家対ネオ・リベラリズム、情報社会化とセキュリティ強化)
第3部 社会主義の系譜
(12)マルクス主義はなぜ失敗したか
(13)現代の社会主義(西欧社会民主主義、グローバル社会運動論)
成績評価方法:
出席(40%)、中間試験(10%)、学期末試験(50%)の合計で評価する。試験は、授業で示した基礎知識の確認と、授業での討議を題材にした小論文から成る。テキストやレジュメを読むだけではなく、出席しなければ解けないので注意すること。
参考文献:
福田歓一『政治学史』(東京大学出版会)
佐々木毅・鷲見誠一・杉田敦『西洋政治思想史』(北樹出版)
→ 近代政治思想史文献リスト